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インタビュー「当センターのコロナ対策」

コロナ禍を通して職員のチーム力が高まり、一丸となってコロナ対策に取り組んでいます。

 

新型コロナウイルス感染症という未知のウイルス流行で幕開けした今年。瞬く間に感染は世界中へ広がってパンデミックを引き起こし、私たちは未曾有の危機に直面することになりました。種子島医療センターも2月にはコロナ対策に着手。院外に発熱外来を設置し、感染予防の強化を図るとともに職員の意識改革にも取り組みました。

その要となったのが、感染管理認定看護師の下江理沙さん。感染管理認定看護師とは、感染対策について高度な専門知識や実践力をもつと認定された看護師のことで、医療関連感染におけるサーベイランスの実践、施設状況の評価、感染予防および管理システムの構築などを行う感染管理のエキスパートです。

種子島では現在のところ、新型コロナウイルスの感染者は出ていませんが、いつ発生してもおかしくない状況の中、環境整備やチーム体制づくりなどを進め、不測の事態を想定した対策を整えてきました。これまで経験したことのない新しいウイルスの感染予防に挑む現場はどう対応しているのか、下江さんに当センターの取り組みについてうかがいました。

 

―新型コロナウイルスについて知ったのはいつ頃ですか? その時、今のような状況を想定されていましたか?

 

空港の検疫所で働いている認定看護師学校時代の友人から、中国で新しいウイルスが流行っているという情報を聞いたのは昨年の12月でした。その頃、当センターではインフルエンザ対策で面会を制限するなどの対応が始まっていて、結核や麻疹のように空気感染をするウイルスだったら感染対策は大変になるとの不安はよぎりましたが、まだ、日本に入らずに収まってくれたらいいなと思う程度で、ここまで深刻な事態になるとは想像もしていませんでした。

 

―2月には国内でも新型コロナウイルス感染者が出て、4月に予定していた当センターの50周年式典の中止を決定しました。感染対策についても対応は早かったですね。実際に感染対策をするにしても、未知のウイルスなので情報も少なく苦労されたのではないですか?

 

1月に中国・武漢市からの帰国者が国内に入ったというニュースを受け、現場でも漠然とした危機感を感じていました。厚労省からの要請を受け、帰国者・接触者外来を設置するなど本格的に動いたのは3月でしたが、すぐにでも対策を始めなくてはいけないとの病院長からの指示もあり、マスクや消毒液といった備品の備蓄など2月半ばにはコロナ対策に向けて具体的に動いていました。

 

新型コロナウイルスの一番の怖さは、ワクチンも決定的な治療薬もないことです。しかも、インフルエンザと違って一般の風邪と似た経過をたどるため判別が難しく、感染が広がりやすいのも怖いところです。インフルエンザと同じように、病原体を病院の中に入れないことが感染対策では最も重要になります。

 

そこでまず、手洗い、消毒の周知や徹底はもちろんのこと、地域の流行状況に応じて段階的に面会制限を進めていきました。また、職員の休憩所にする予定だった病院裏にある家屋を、早急に発熱外来用に改装し、発熱や風邪の患者さんはそちらで診察することにしました。現在は、病院の玄関前に発熱外来の小屋を設けて対応しています。

 

初期対応が院内感染防止の要になるので、患者さんに理解をいただきながら、少しでも危険性のある行動は排除しています。現場ではそういう緊張感をもって業務に当たっていますし、院内感染を食い止めるには、基本的な感染対策を、気を抜かずに行うことがコロナ対策につながるという思いでやっています。

 

―島内で感染者が発生した場合、当センターは第二種感染症指定医療機関として感染者を受け入れ、守らなくてはいけませんね。また、院内感染が起きた場合など、さまざまなことを想定した感染対策を考え、現場に周知させるのは大変ではありませんでしたか?

 

医療関連感染の発生を把握し、それを施設全体で共有して改善に向けて動くことこそが、感染管理認定看護師の主な役割なんです。認定看護師の学校では、そのための組織体制づくりやマネジメントを学び、資格を取ってからは学校で作成した施設プログラムを基に、現場がより動きやすいように組織やシステムを作り直しました。実働部隊となる感染制御チーム(ICT :Infection Control Team)を発足し、インフルエンザやノロウイルスについても、医師、看護師、薬剤師、検査技師がチームとなって感染対策を行ってきました。現在も重要な感染対策の周知を繰り返し行いながら現場の意識向上に取り組んでいますので、その点は心配なかったですね。

 

新型コロナウイルスについては、現場のスタッフが不安にならないよう、またいつ島内に入ってきても慌てずにきちんと動けるよう、3月と4月は毎週1回、今も定期的に総合診療科部長の松本松昱先生にお願いして勉強会を開いています。

 

―勉強会では具体的にはどのようなことをされるのですか?

 

“新型コロナウイルスを正しく恐れよう”をスローガンに基礎知識の学習から、防護服の脱着、ゾーニングをして患者さんを移送するといった実践的なデモンストレーションを繰り返し行っています。ゾーニングとは、感染症患者さんが入院された場合、病原体によって汚染されている区域と一般の患者さんのいる汚染されていない区域(清潔区域)を完全に区分けすることで、防護服の脱着も着衣場所と脱衣場所をしっかり分けて行います。

 

これまで当センターでも、新型コロナウイルス感染症の疑似症患者さんが発生したことがあります。県の指示を仰ぎながら動いたのですが、そうした事例を通して感染症患者さんが入院された時のチーム体制づくりや対応方法も具現化できています。

 

―実際に動くには、新型コロナウイルスの感染対策マニュアルも必要ですね。それについてはどうされたのですか?

 

新型コロナウイルス感染者が発生した場合に備えて、マニュアルの改訂には早いうちから着手しました。当初は情報がほとんどありませんでしたので手探り状態でしたが、先輩方が院内の感染対策マニュアルをしっかりと作ってくださっていたおかげで、スムーズに着手することができました。

 

ただ、感染対策は基本的には共通していて、まったく新しい対策はないと思っています。外来に掲示しているコロナ対策の看板や問診なども、過去に学会などで提示されてきたガイドラインに準じたものです。新しいマニュアルについても、ようやく対策方法が統一されてきて、厚生労働省の指導に沿って段階的に改訂していますが、最初はこれまで試行錯誤でやってきたことだったり、過去の文献だったり、エビデンスに基づいた情報を集めて作り直しました。

 

例えば、新型コロナウイルスの特性に沿った消毒法を始め、感染患者さんが外来に来た時はどうするか、院内発生した時はどうするか、スタッフが迷わず動けるように実践的なマニュアルにしています。

 

―とはいえ、新しい知識を浸透させ定着させるのは大変だと思います。そのために心掛けていることはありますか?

 

全職員にはマニュアルに沿って対応してもらっています。しかし実際の現場では、それができなかったり、判断がつかずに迷ったりすることが出てきます。感染予防は、「このくらいなら大丈夫」という気持ちで動かないことが重要です。スタッフにはそのことを伝えて、どんなこともすぐに電話で相談してもらい、その場で具体的な指示ができるように心がけていますが、マニュアル通りにいかない場合は、できる方法を一緒に考えながら解決しています。

 

―島内には新型コロナウイルス感染者は出ていませんが、全員が緊張を強いられながら業務に当たってきました。不安な日々の中、先頭に立って動いてくれる感染管理認定看護師の下江さんの存在は心強く、みなさん感謝していると思います。重責をともなう任務だけにプレシャーはありませんか?

 

感染対策の専門家として自分で判断しなくてはいけないプレッシャーを感じることもありますが、今年7月に感染防止対策加算1を取ったことが大きな支えとなっています。

 

加算2は取っていましたので、コロナ対策についても鹿児島市内の病院と連携を図れたのは心強かったですね。さらに加算1を取ったことで県医師会によるコロナ対応の相談窓口業務にも入り、そのカンファレンスに毎週1回ウェブで参加するようになりました。他の病院のコロナ対応がリアルタイムで分かるおかげで、自分の病院の対応についても客観的に判断できていると思いますし、現場にもそこで得た正しい情報をいち早く還元できます。

 

なによりも、感染管理の専従者としてコロナ対策に専念できるようになったことがありがたく、以前より不安なく取り組めています。

 

―コロナ禍がもたらしたのはマイナスだけでなく、プラスの作用もあったということですね。

 

先見の明に長けた病院長にアドバイスをいただきながら、現場でできることを考え、先手を打って動いてきました。7月に導入したPCR検査もそのひとつです。唾液を検体として用い最短20分で判別できる鹿児島大学で新しく開発された画期的な検査で、導入に当たっては検査技師の方々が積極的に動いてくださいました。

 

勉強会ではデモンストレーションの後に振り返りをするようにしたところ、現場のスタッフから活発な意見が出るようになり、できているかできていないかの判断も評価できるようになりました。マニュアルについても院内感染が起きた場合や職員が感染した場合の初期対応手順を見直し、実践的なものにできたことはよかったと思っています。

 

プラスになったことはまだあります。今回、スタッフの新たな姿に触れて誇らしい気持ちになり、そうした環境で働けることに改めて感謝しました。なによりも、感染に対する職員の認識やチーム力が高まってできる感染対策も広がり、「これから島内で感染者が出た時には頑張ろう」と、みんなが一丸となれたのは、コロナ禍がもたらした成果だと思っています。

 

感染対策は一人ではできません。チーム全体が同じ方向を向いて取り組むことで、ようやく成り立つということを実感しています。コロナ禍が落ち着いた後も、チームが継続できるように頑張っていきたいです。

 

―最後に、これから取り組みたいこと、伝えたいことはありますか?

 

コロナ対策では、不安やストレスといった精神面にも注意が必要です。感染症患者さんは隔離状態になるため、孤独感に陥ってしまい、現場のスタッフもまた、気持ちが落ち込みがちになります。そうした心の変化を早期発見できるように、周りのスタッフと連携し、ケアやフォローのできる方法を確立できたらいいと思っています。困ったことがあれば、すぐに医療従事者の私たちに伝えてもらいたいですし、できることはたくさんあると思います。

 

ありがたいことに、奇跡に等しいほど島内でコロナ感染者が出ていません。今、懸念しているのが、社会問題になっている感染者への誹謗中傷です。実際に島内で感染者が出た時に、そういうことが起こらない環境づくり、患者さんもスタッフも誰も、精神的に病むことのない環境づくりもしていきたいと考えています。

 

―ありがとうございました。