7月朝礼講話 — 種子島の医療を支えるリハビリテーションへの期待—

 

1963年に日本リハビリテーション医学会が創設され、リハビリテーション医学として学術的分野が発展してきた。『地域リハビリテーション論』(三輪書店)では、著者の大田氏らは、地域リハビリテーション活動を3期に分け、昭和 58年(1983年)頃までを「個別活動期」、平成11年(1999年)頃までを全国展開期、平成12年(2000年)頃から現在までを再編・混乱期としている。

 

転換点になっているのは、①老人保健法とその他の法整備により、在宅高齢者・障害者に向けてのサービスの種類が増加、②平成10年(1998年)の地域リハビリテーション支援体制整備推進事業、③平成12年(2000年)の介護保険制度および回復期リハビリテーション病棟の開始である。このように地域リハビリテーションは比較的新しく、かつ大きな広がりが期待出来る医療分野となってきた。

 

2000年から始まった種子島医療センターの「回復リハビリテーション病棟」は、種子島においても2006年(平成18年)から当センターの最も特徴ある診療病棟として新設され、整形外科・脳神経外科をはじめ多くの患者さんを受け入れてきた。現在では、365日稼働するリハビリテーションとなり、80数名の理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が、急性期の治療を終えた患者さんが自宅や社会に戻ってからの生活を、少しでも元に近い状態に近づけるために懸命なリハビリテーション活動を行っている。

 

種子島医療センターでは、脳血管障害、運動器のリハビリテーションを中心に、小児、がん、摂食嚥下障害など多岐にわたって高いレベルのリハビリテーションを提供している。リハビリ職員の8割は、全国から集まった目標と向上心のある若者であり、その高いポテンシャルとエネルギーが病院の活性化にも繋がっている。

 

私が赴任した時、種子島の高齢者医療を担う部署の一つにリハビリテーションは必須と考えられた。すなわち、高齢者医療は急速に進んでおり、とくに外科系では90歳を過ぎた超高齢者でも手術の対象となり得る時代となった。その際、手術後の回復過程におけるADL、認知機能の改善など多岐にわたる諸問題がある。患者ひとり一人の異なる問題点に対応出来るリハビリテーションの技術と活用が必要不可欠なのである。

 

日本リハビリテーション医学会は、「障害を克服する」「機能を回復する」「活動を育む」を掲げ、新たなリハビリテーションの科学と医学の展開に取り組むとしている。私たちの二足立位姿勢や歩行運動の制御には多くの中枢神経領域と大脳皮質が深く関わっている。

 

近年のリハビリテーションでは、中枢神経系に直接アプローチする技術が応用されつつある。本院においても研究発表に熱心なPT、OT、STの諸君らに、ここ種子島でさらなるリハビリテーションの新展開を大いに期待したい。

 

 

病院長 髙尾 尊身